2011年11月8日

八海山尊神社から雲洞庵へ(南魚沼市)


 山を登ったついでになどと思っていると、なかなか訪れる機会はめぐってこない。晩秋の晴天の1日を越後・南魚沼の猫めぐりに費やした


八海山尊神社の猫札
 八海山尊神社は、越後三山の八海山(1778m)大崎口にある由緒ある神社。40年近く前の11月初旬、荒沢岳から八海山を縦走した。その最終日、千本檜小屋から霊泉小屋を経て五日町駅へと下ったが、この神社についての記憶は全くない。現在の社殿は1979年に建てられたそうで、それ以前はもっと規模が小さかったのだろうか。10月20日恒例の火渡祭には今年も5千人の人で賑わったという。

 浦佐駅始発のバスを八海山入口(大崎)で下車。登山口目指して行くと20分で辿り着いた。社殿に続く石段前の広場に火渡祭の跡を見る。参拝後に拝殿に入ると、目当ての鼠除けの御札が。宮司さんにお話を聞く。昭和30年代半ばの小学生の頃、まだ養蚕が行われていて、体育館で繭玉の品評会をしていたのを覚えているという。かつて、お蚕を鼠から守るための御札は、猫絵ゆえに今でも人気があるのだ。残念ながら八海山には猫の伝説はない。猫の御札一枚ほしくて来た奇特者に「またご縁がありましたら」と宮司さん。

八海山尊神社

昔「鼠除」今は「猫札」人気

雲洞庵の「火車落の袈裟」と「化け猫の骨」
 次の目的地は金城山麓の雲洞庵。大河ドラマ「天地人」で、上杉景勝と直江兼続が幼少時代を過ごしたことで一躍有名になった。鈴木牧之の「北越雪譜」には、雲洞庵の北高和尚が野辺送りの棺を奪おうとする化け猫を退治した話がある。六日町駅から坂戸山(633.9m)の山裾を歩いて約1時間だ。坂戸山は金城(1369m)へと峰続きで、積雪期は低山ながら面白い雪稜となりそうだ。

雲洞庵本堂
 今年7月下旬の新潟・福島豪雨で雲洞庵にも土砂が流れ込み、金城山登山道は通行禁止。大河ドラマ「天地人」から2年たつが、観光バスで次々と拝観者が訪れ、その人気ぶりが伺われた。一通り拝観をすませ、最後に宝物殿を見学。歴史的に貴重な文物が多く展示されている。その中で見逃せないのは、北高禅師が着ていた血染めの「火車落としの袈裟」と、退治された化け猫の頭骨。頭骨は、猫科の動物のものという感じではないし、火星人みたいな顔をしている。ま、怪獣だから、これはこれでいい。伝説の物証が大切に残されていることに意義がある。説明書きによると、化け猫の出撃基地は金城山の岩洞だったという。「北越雪譜」にはない情報だ。その岩洞の場所が特定されていれば興味深いのだが。

大涅槃図に謎の双尾猫がいた
火車落としの袈裟と怪獣の頭骨(手前)
塩沢への道から金城山を仰ぐ

塩沢の鈴木牧之記念館
 六日町駅までの送迎バスを断って、歩いて塩沢駅に向かう。金城山を何度も振り返りながら南魚沼をテクテクと歩くのは楽しい。小一時間で塩沢駅に近い鈴木牧之記念館に着いた。牧之の生家という酒屋さんの前の通りは、三国街道塩沢宿牧之通りとして観光客を呼び込んでいる。今年度の都市景観賞を受賞したという。

鈴木牧之の生家は健在
 記念館で目を惹いたのはワカンのおばけのようなスカリ。会津山岳会の会報は「すかり」だったと記憶する。先端につけた長いヒモを手綱のように持ち、雪に深く沈んだ足を引き上げるという使い方をする。

すかりの使い方が分かる
 なお、牧之は「飯士山の東に阿弥陀峯があり」と「泊まり山の大猫」に書いたが、塩沢から見ると、飯士山の右手に阿弥陀峯が位置するため「東にある」と書いたことがわかった。地図上では飯士山の北北西に阿弥陀峯がある。