1998年4月19日

猫山探しは面白い 2

 今回の猫山探しの話題は、ちょっぴり残念な話。猫と縁のある東京都唯一の山として登場させるかどうか大いに悩んだのが、奥多摩・戸倉三山の臼杵山(835m)だ。

 頂上の臼杵神社にある一対のお狗様が猫であるというのは、ガイドブックにも紹介されているから、臼杵山は猫山であると喜んでいいはずである。養蚕の守り神の使い姫として猫を祭る風習から、狛犬のかわりに猫の像となったといわれる。

 しかし、「岳人」511号で日本石仏協会会員の田中英雄氏が、「奥多摩のお狗様考」と題して考察した中で、お狗様信仰と養蚕の石像が造られはじめた時期のズレを指摘し、臼杵山の石像は猫ではなくお狗様であると結論づけている。

 「岳人」520号の山の雑学ノート(「猫に化けた山犬」関本快哉氏)でも、「歴史のどこかで、山犬碑を取り違えたのではないか」と述べている。最初に臼杵山の狛犬を猫と紹介したのは、奥多摩研究で知られる宮内敏雄氏の著書「奥多摩」(昭和19年、昭和刊行会)だったという(前出「奥多摩のお狗様考」)。

 なにぶん手がかりとなる史料にも乏しく、本当のところどうなのかは今後の研究次第だろう。臼杵山に登ってその石像をみるかぎり、猫にはとても見えなかったので分はなさそうだ。

 ただ、猫山ウオッチャーの自分としては、猫碑であってほしいという願望と、ガイドブック等ですでに「猫らしからぬ猫」などと扱われている話題性から、この際、猫山リストに挙げておいてもよろしかろう思うのですが……。(そうしましょう)

1998年4月5日

猫山探しは面白い 1

 猫と縁のある山を調べていて、興味深いことが二つあった。

 そのひとつは、北アルプス・乗鞍岳の一峰である「猫岳」(2,581m)についてだ。猫岳と名のつく山はいくつかあるが、なかなか見つけられなかったのが、この乗鞍・猫岳だった。

 自分が乗鞍岳に登っていなかったということもあるが、山名調査の参考にした「コンサイス日本山名辞典」(三省堂)と「日本山岳ルーツ大辞典」(竹書房)のどちらにも記しておらず、この段階では見落としていた。

 その後、たまたま「すぐ役立つ 山を楽しむ山名辞典」(石井光造著、東京新聞出版局)という本を見たら、著者の選んだ1200山に入っているではないか。新しく猫山が見つかったのはうれしいが、疑問も湧いた。

 地図でみると道はなく尾根上のこぶにすぎず、すぐ脇を乗鞍スカイラインが走っている。不思議なのは、山名辞典や乗鞍岳のガイドブックにも記述がないこの山がなぜ、「1200山」には載っているのかだった。

 著者の前文によると、1200山の選定の参考にしたのは、建設省国土地理院発行の「日本の山岳標高一覧 1003山」とのことで、確かめたら乗鞍岳の猫岳は「標高点」のある山としてちゃんと載っている。

 このため、必ずしも登山の対象としては魅力の薄い乗鞍の猫岳も、1200山に入れてしまったということだろう。
 
 探せば猫山はまだまだありそうだ。もう一つについては、次回に。