1999年3月28日

見つかる、広がる猫の山

 待ち望んでいた本が出た。白山書房創立20周年記念出版の『日本山名総覧 1万8000山の住所録』(武内正編著)である。

 猫山探しが手元の資料だけではもはや頭打ちになっていただけに、この本で少なくとも「猫」のつく山は総ナメにできると心待ちにしていた。期待に違わず、新たに5山の猫山を発見することができた。特にうれしかったのは、北海道にも「猫山」という名称の山が存在したことだ。

 その一方で、すでにぼくが調査していた猫山のいくつかが漏れていることも判明した。例を挙げれば北アルプスの「大猫山」、奥美濃の「猫洞山」などである。山名総覧は2万5千分の1の地形図記載の山名を基本に、自治体への照会で同定したのだそうだが、登山者や地元が通称で用いていても地図に未記載の山名については漏れているとのことだ。

 すでに一部のガイド本には記載されている山名であるだけに、未収録となったのは残念に思う。地図未記載の山名については、改訂版発行の際にぜひとも載せてほしいものだ。

 また、民間伝承や昔話中の猫にまつわる山のいくつかが同定できずに困っていたが、実在する山かどうかの確認は山名総覧でもできなかった。

 もうひとつ細かいところを指摘しておけば、根子岳には信州・菅平と九州・阿蘇に2山あるが、(猫岳)と別名を添えているのは阿蘇の方だけなのはなぜだろうか。

 「コンサイス日本山名辞典」(三省堂)では両方の山に猫岳と別名を入れている。山名総覧「生き物山名」の項で、猫の字がつく山20山として阿蘇・根子岳(猫岳)も含めるのなら、菅平・根子岳も加えてもいいはずだが、はずれたのは地元の呼称に従ったから(別名なしと?)ということだろう。猫岳参り伝説のない信州・根子岳にとっては、わざわざ「猫岳」の別名をもたなければならない裏付けに乏しい。

 それにしても膨大な山名データをまとめ上げた労作に拍手を贈りたい。著者は生涯をかけて山名総覧を改訂・充実していくとのことで、今後の調査を期待しつつ見守りたい。