2003年3月23日

七ツ小屋山は「猫池山」でもよかったと思う

 このところ上越の山が猫くさい(と勝手に思いこんでいる)。今回のネタは七ツ小屋山(1675m)。2002年夏の集中山行で登った。私は腰痛のため白樺尾根から1人で向かい、頂上で湯桧曽川本谷パーティーと合流した。丸ノ沢本谷と七ツ小屋裏沢の各パーティーを待つあいだ、仲間が広げて見ていた登山地図(昭文社エアリアマップ)を覗き込んでハッとした。七ツ小屋山のすぐ東に「猫池」と記載されているではないか。10年以上前に買った自分の登山地図には載っていないので知らなんだ。丸ノ沢左俣の詰めで池に出合うということが日本登山体系には書いてあったが、位置からしてこの「猫池」のことなのだった。

 なぜ、「猫池」という池なのか? 尾根上なので「根ッコ」や「根古」の転化ではなさそう。カギは七ツ小屋山の由来にあるとにらんだ。『日本山岳ルーツ大辞典』には、「麓に七軒の小屋があったことに由来する」とトンチンカンな説明で話にならない。手元にある他の資料では『越後の山旅 下巻』(藤島玄、富士波出版)がある。通読したことはないが、山名や古文献に詳しく手がかりがあるかもしれない。すると、198頁「蓬峠と清水峠と茂倉岳」で、七ツ小屋山から清水峠へは「東へ緩降し、左下には猫池を見下ろし」と、さりげなく「猫池」が登場していた。山名の由来についても触れており、「参謀本部の測量当時、この附近に七ツの天幕を張って長期間の測量をしたからの山名だ、というから呆れるが」とある。

 呆れた山名のついでに想像力たくましく謎解きしてみよう。天幕を張って長期間の測量をしたのは事実だろう。測量技師かボッカ・飯炊き人が慰みに猫を連れてきていたとする(ここがポイント)。飲料水に利用した池に猫も水を飲みにきた。そこでこの池を猫池と名付けた。いまさら断定はできないし、調べようもない。ただし全く可能性がないとは言えないことである。かつて付近に気象観測所があったので、それとの関連も少々気になる。

 七ツの天幕を張ったということから「七ツ小屋山」になってしまうくらいだから、この山は「猫池山」と命名されてもおかしくはなかった。惜しい!