2010年10月16日

龍徳寺の猫塚伝説と猫塚山(福島県伊達市)

 徒登行山岳会創立40周年記念の集いが行われる10月16日、会場の那須・新甲子温泉には夕方まで入ればいいので、ついでに福島県内の猫山を探ることにした。

 標高200m程度、登れば15分もかからないだろうということで、福島市に隣接する伊達市の猫塚山(同市霊山町下小国)に向かう。このあたりはバス路線が複雑で本数も少ない。事前に調べておく必要がある。福島駅東口からバスで小国街道(国道115号)を山あいに入り、約40分で月館入口下車。付近に「みさとユースホステル」がある。

 猫塚山とは、頂上に猫塚神社(八雲神社)があることから地元で呼ばれてきた名称だ。その神社へは、バス停付近のレストラン愛華夢の脇から入る道がある。石碑がいくつかあるのですぐ分かる。猫塚神社へ登る途中に熊野神社があり、ちょうど24日に行われる例大祭の鳥居を建てる作業中のおじさん達に会う。道はこの先すぐ分岐し、左が熊野神社を経由する急坂の道、右が大きく回り込んで、直接猫塚神社に出る道だという。かつてはもっと左手から猫塚神社に登る道があったが、民家が建ったため使われなくなったらしい。

 せっかくだから、右の道から直接猫塚神社に至り、下りは熊野神社経由にすることにした。ところが、この迂回道はクモの巣だらけで両側から竹が倒れ込み、藪も刈っていないので後半はちょっとした藪漕ぎとなる。ズボンは汚れスネも枝に打ち付けて傷だらけとなったひどい道だった。猫塚神社の裏手から回り込むように尾根上に出た。途中、地形を確認したり時間を食い20分程度かかってしまう。

猫塚山八雲神社(背面は赤い岩に食い込んでいる)

 神社の前の土は猫の血で染まったという伝説のとおり赤い。神社の裏は大きな岩を削って建物と密着させている。猫塚の赤岩そのものに建物を合体させて建てた珍しい社である。中を覗くと岩の左右に猫の浮き彫りが確認できる。

社殿内部(岩の左右に猫の浮き彫りがある)

 猫塚神社右奥には一回り小さい社とその奥に岩コブがあり、石碑が置かれていたような台座が彫られていた。あとで聞くと金華山ということだった。

 社の左から下る踏み跡があり、熊野神社への道だろうと思い、急坂を強引に降りる。小さな神社に至り、右手から龍徳寺に出てしまう。登るには分かりづらいだろう。またレストラン愛華まで戻り、作業中のおじさん達に話すと、そんな道は知らないという。熊野神社へは左の道を登るとすぐだ。この先は登らなかったら、猫塚神社右手に出るのだという。

「赤岩の猫塚伝説」が伝わる龍徳寺(現在は無住)

 曹洞宗瑞雲山龍徳寺(伊達市霊山町下小国字力持71)は、神社登り口から小国街道を福島市方面へ50m戻ったところが入り口で、今は無住だが立派な構えの古刹である。赤岩の猫塚は400年前の「龍徳寺の猫」伝説にちなむ。この伝説では、前半と後半で猫の立場というか評価が正反対となる。まず龍徳寺で飼われていた猫のトラが大活躍するのだ。

 大旱魃で村人らがどうにも困り果て、龍徳寺の住職が雨乞いする傍らで、トラも一緒になって雨乞いに加わるようなしぐさをする。すると雨が降り出して村人らから大した猫だと感謝される。ただし後半では、墓を掘り出して死体が消えてしまう事件が発生。住職が見張っていると墓を掘り出すのは化け猫となったトラであった。住職はトラを寺の裏山の頂まで追い込み、槍で突き刺した。あたりはトラの血で赤く染まったという。村人は祟りを恐れて社を建てて猫塚を祀ったことから猫塚山という。猫が大病した際に参拝すると効能があるといわれた。大旱魃を裏付けるかのように西方に雨乞山(353m)がある。

小国川付近からみた猫塚山

 なお、レストラン愛華夢の主人にも話を聞くことができたが、猫塚神社(八雲神社)の大祭は4月に行われるという。その際は迂回経由の道も刈り払って整備するといっていた。神社は、地図上では山腹にあるように記されているが、実際は尾根上にあることが気になった。4月の大祭も見てみたいものだ。