以前に紹介した在野の猫民俗学者・永野忠一さん(2003年に享年102歳で他界)の著作を探し求めて約10年。いつの間にか主な8冊を収集して、永野忠一著作コレクターとなってしまった。それまでは国会図書館に行かないと、目にふれることはできなかった。半ば自費出版系の書物なので、神田古書店街を徘徊しても、おいそれとは手に入らないレアもの猫本である。
しかし、インターネット時代の古書探しは、居ながらにして目当ての本を探し出すことができる。根気強く検索をかけることが大事で、初めて探し当てたのは3年ほど前。それからトントン拍子に見つかった。出どころは兵庫、岡山、福岡、東京中野の古書店だった。まるで本のほうから「買ってくれ〜」と自分を呼んでいたかのように、検索した日に売りに出ていることもあった。
コレクションの発行年順に並べてみると、
(1)『怪猫思想の系譜』(1971)
(2)『信仰と猫の習俗』(1971)
(3)『猫その名と民俗』改訂版(1972、初版1965)
(4)『猫の幻想と俗信』(1978)
(5)『日中を繋ぐ唐猫』(1982)
(6)『猫と日本人(猫の文化史)』(1982、国会図書館蔵本の複写コピー)
(7)『猫の民俗誌(続、猫と日本人)』(1986)
(8)『猫と故郷の言葉』(1987)
これ以外に未収集本として、(9)『エジプト猫、その行方』(1968)、(10)『猫と源氏物語』(1997)がある。
国会図書館にあるのは、(3)(4)(5)(6)(7)(8)(10)の7冊。国会図書館に保存されていない(1)(2)は小冊子で、これからも古書店に出回ることは極めて少ないだろう。(9)は発行年も古く、もはや幻の本か。類書として『猫たちの世界旅行ー古代エジプトから日本まで』(1993、NHKブックス、ロジャーテイバー著、絶版)がある。テーマからして、あえて手に入れる必要はないと思う。(10)は、日本橋蛎殻町の自費出版図書館にあるので、ネットから申し込んで借りることができる。
これから少しずつ読み込んでいきながら、永野先生が退職後40年以上にわたり苦しんだ猫民俗との格闘を自分も強いられる気がする。とりあえず、老後がヒマにならないだけでも幸いといえる。
登った数を気にするような山登りなんぞさらりと捨てて、新たな山と猫の地平を目指す本格的な探求を始めてみるのもそろそろよさそうだ。変な宗教などにのめり込むわけではないから、それほど他人に嫌われないじじいであればいい。ただし、変わり者のネコじじいと指さされそうだが。