今回の猫山探しの話題は、ちょっぴり残念な話。猫と縁のある東京都唯一の山として登場させるかどうか大いに悩んだのが、奥多摩・戸倉三山の臼杵山(835m)だ。
頂上の臼杵神社にある一対のお狗様が猫であるというのは、ガイドブックにも紹介されているから、臼杵山は猫山であると喜んでいいはずである。養蚕の守り神の使い姫として猫を祭る風習から、狛犬のかわりに猫の像となったといわれる。
しかし、「岳人」511号で日本石仏協会会員の田中英雄氏が、「奥多摩のお狗様考」と題して考察した中で、お狗様信仰と養蚕の石像が造られはじめた時期のズレを指摘し、臼杵山の石像は猫ではなくお狗様であると結論づけている。
「岳人」520号の山の雑学ノート(「猫に化けた山犬」関本快哉氏)でも、「歴史のどこかで、山犬碑を取り違えたのではないか」と述べている。最初に臼杵山の狛犬を猫と紹介したのは、奥多摩研究で知られる宮内敏雄氏の著書「奥多摩」(昭和19年、昭和刊行会)だったという(前出「奥多摩のお狗様考」)。
なにぶん手がかりとなる史料にも乏しく、本当のところどうなのかは今後の研究次第だろう。臼杵山に登ってその石像をみるかぎり、猫にはとても見えなかったので分はなさそうだ。
ただ、猫山ウオッチャーの自分としては、猫碑であってほしいという願望と、ガイドブック等ですでに「猫らしからぬ猫」などと扱われている話題性から、この際、猫山リストに挙げておいてもよろしかろう思うのですが……。(そうしましょう)